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大谷哲也さんとイデアルビストロ山嵜宏樹シェフの対談

2025年10月に行われた大谷哲也器展のイベントで、天満橋にあるイデアルビストロ 山嵜シェフに大谷さんの器でお料理とお菓子をご提供していただく会を開催いたしました。

その際にお二人に器の制作に関してや料理のプロの器選びのことなど、お話していただきました。その内容を皆様にもぜひお楽しみ頂きたいです。

SHELF
今日のデザートのモンブランについてお伺いさせてください。
山嵜さん:
今回は大谷さんの器から発想して、のデザートにモンブランを用意しました。
ヨーグルトとカシスを使ってバランスよく組み合わせています。
まず、抹茶のクリームの上にスポンジを置きます。
そのスポンジに クレーム・ド・カシス を染み込ませて、その上からクリームを絞って仕上げています。
SHELF
デザートも山嵜さんが一人で作っておられますね?
大谷さん
シェフが一人でされているお店に行くと、デザートにフルーツがちょこっと出て終わり、みたいなところもありますが、イデアルビストロさんはデザートもきちんと「一つの料理」として出てくるのですごいなと思います。
山嵜さん:
以前勤めていたところは大きな店だったので、私はデザートには一切携わっていなくて、パティシエが担当していました。
大谷さん
だから、山嵜さんが料理もデザートも全部1人でやっているのは本当にすごいです。
山嵜さん:
基本的にデザートが好きなんです。
フランス料理は、例えばパイ生地のように、デザートと共通する部分も結構あって。
フランス菓子は奥が深くて楽しい。料理とは違う楽しさがあります。
SHELF
お店を始めるにあたって、お皿選びはどのようにされたんですか?
最初から大谷さんにお願いされていますね。
山嵜さん
お店を始める前から、大谷さんの器が大好きだったんです。
最初に見たのがギャラリーヤマホンさんで。
これだ!と思いました。
それから何度か伺って。
「お店をやるなら大谷さんの器を使いたい」
それは最初から決まっていました。
SHELF
ご夫婦おふたりでお店をされていますが
山嵜さん
当初は、スタッフを雇う気満々でした。
でもコロナ化になって、こじんまりでもいいなと思うようになって。
最近は畑も初めて野菜やハーブも作っています。
どんどん本格的になってしまってるんですけど(笑)
やりすぎないように気をつけています。
SHELF
プロの料理の作り手に器を求められると、大谷さんはどう思われますか?
大谷さん
小さな頃は料理人になりたいと思っていました。
だんだんとそのことは忘れてしまって、大学ではデザインを勉強しましたが。
こうして器を使ってもらっていると、子供の頃になりたかったシェフに近づけるような気がして。
SHELF
大谷さんの器作りのきっかけは?
大谷さん
子供の頃は料理人でしたが、中学生くらいからカーデザイナーになりたくて、大学ではデザインを勉強しました。
でもちょうどバブルが弾けた時期で、どこのメーカーも採用ゼロでした。
一年就職浪人して再挑戦しましたがダメで、信楽にある窯業試験場という研究機関の仕事に就きました。

そして器を作りだしましたが、最初からレストランに使ってもらえるわけではなかったです。
ご縁があり、同じ時期に2軒、パリと京都で使っていただくようになって。
シェフたちが同業者の店を食べ歩きされて、器のことも教えあってくださって。
多くのレストランに使ってもらえるようになっていきました。
レストランでは自分の作品が最良のかたちでプレゼンされていますし、なんといっても子供の頃の夢でもあったので、食べに行くと本当に嬉しいですよね。
SHELF
レストランのオーダーに関してはどうされていますか。
大谷さん
定番の中から選んでもらう事もありますし、「イメージ」を伺ってサンプルを何度もやりとりすることもあります。
こんなものを作ってほしいと、量産メーカーのものを持ってくる方もいますが、それはもちろんお断りしています。

うつわを考える際に、僕は プロ用と家庭用 を分けたくないんです。
よくそういうのを分けているメーカーもありますが、そんなマーケティング的なコンセプトが好きではなくて。
僕のコンセプトは「主婦からシェフ」までですから(笑)。

うつわを作る時に常に考えていることは、意識的に「余白」は作ることです。

レストランって、家庭に比べて同じものをたくさん買うわけですよね。そうすると廃業した際なんかに、たくさん作品が蚤の市的なところに出回ったりすると思うんです。
例えば100年後にそいうマーケットで、あの時代に流行った器だと、まとめて見てもらえるかもしれないと思うとワクワクしますね。
食器の形そのものは、人の身体のサイズもそんなにかわらないので、大昔から同じようなものが作り続けられています。
でも似たようなサイズ感であっても、そこには時代が反映されていることが重要だと思っています。
だから古いものの「うつし」は作らない。
僕たちが生きている今でつくりたいと考えています。
古い花器のかたちを下敷きにしたとしても、今のテイストを盛り込んでいる ありそうでなかったものをつくっていきたいですね。

今日お料理に使用してもらった器は高台がありません。
今僕たちが現在焼成に使っているような窯道具を使わずに、薪を燃料にした窯で高台のないものをたくさん焼成するのは意外と難しいんです。
また今は食洗器を使う時代です。高台がないとたくさん食洗機に入れることもできますし、裏側に水もたまりません。高台がなくてもいいのであれあば、つけなくても良いと意識的につくっています。
技術が進化した現代だからできる形 があると思います。
また磁器は陶器の4倍ほどの曲げ強度がありますのでその分薄くつくれます。
吸水性もほほゼロですし、匂いも色も移らないので飲食店ではとても使いやすいと思います。
SHELF
土鍋に関してお話お願いいたします。
大谷さん
土鍋を作って20年近く経ちます。
きっかけは自分たちの暮らしの中で欲しいと思うものでした。
もともとは冬のお鍋に使うくらいしかつかってなかったのですが、大先輩の土鍋作家さんのところへ遊びに行くと、季節に関係なく、いつも土鍋料理をだしてくださって。それがとても良いなぁと。
ほどなく自分でも作るようになって、僕たちの暮らしの中で使うようになりました。
蓋がなくてもいい、年中使いたい、しまいこむものではない、重ねたりできるものが良いと考えて取手も蓋もない土鍋にしました。
最初は売れなくて洗面器みたいと言われたりしました(笑)。
山嵜さん
使っているうちに育っていく感じが素敵ですよね。
大谷さん
白くて汚れると最初言われましたが、家で使っている土鍋を見てもらうと、「これが欲しい!」と言われたりしました。
SHELF
使う度にこの土鍋の魅力を感じています。奥様の桃子さんのインスタや一田憲子さんのホームページの桃子さんの連載でもご紹介されていますが様々なお料理やお菓子を哲也さんの土鍋でつくられています。
ギャラリーのイベントでもプリンを作ってもらったりパンを焼かれる方もいらっしゃいます。
鍋でもありフライパンのようでもあり幅広く使うことができます。
大谷さん
ご飯は土鍋で炊くと本当においしいでのでおすすめです。
15分もあれば炊けますし、そのあと蒸らすだけ。慣れると簡単ですよ。
SHELF
今回はイデアルビストロの山嵜さんと大谷哲也さんにプロの方と作り手のお話をお伺いできとても興味深い話ばかりでした。
ご参加の皆様も大谷さんの器で美味しいお料理やデザートを楽しまれた貴重な時間になりました。ありがとうございました。

こぼれ話

大谷さんの作品は、ジンバブエで産出されるペタライトという鉱物を使っています。
1200度前後で焼成するとペタライトからβスポジュメンという結晶ができます。
通常、物質は熱すると膨張するのですが、βスポジュメンは逆に収縮する性質を持っています。
この性質を利用して、膨張する粘土と混ぜることで膨張を相殺し、加熱しても割れないようにしています。
実はこのペタライトはリチウムの原料でもあります。
昨今の電気自動車の普及でリチウムイオンバッテリーが必要になり、中国の商社が独占して購入できなくなっていたのですが、2年ぶりに輸入できるようになり、作れるようになりました。

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